所得税における為替差損益の取扱い

昨今の大幅な円安により外貨にて資産運用等されている場合には、為替差益が生じて確定申告が必要となるケースがあります。

外貨建預貯金をして円に戻した場合

米ドルでA銀行に定期預金1万ドル(1ドル=100円)をして、その後、解約(1ドル=150円)して円で受け取った場合

預入時 1万ドル×100円=1,000,000円 → 解約時 1万ドル×150円=1,500,000円       この差額500,000円は 為替差益を所得として認識する必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外貨建預貯金の預入及び払出の場合

米ドルでA銀行に定期預金1万ドル(1ドル=100円)をして、その後、満期(1ドル=150円)となり全額を払出し、同日、元本部分1万ドルをB銀行に預け入れた場合

預入時 1万ドル×100円=1,000,000円 → 満期時 1万ドル×150円=1,500,000円       この差額500,000円は 為替差益を認識する必要はありません。

 外貨建取引とは、外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れその他の取引をいい、居住者が外貨建取引を行った場合には、その外貨建取引の金額の円換算額はその外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額として、その者の各年分の各種所得の金額を計算するものとされています(所得税法第57条の3第1項)。
ただし、外国通貨で表示された預貯金を受け入れる金融機関を相手方とする当該預貯金に関する契約に基づき預入が行われる当該預貯金の元本に係る金銭により引き続き同一の金融機関に同一の外国通貨で行われる預貯金の預入は、上記の外貨建取引には該当しないものとされています(所得税法施行令第167条の6第2項)。
したがって、外貨建預貯金として預け入れていた元本部分の金銭につき、1同一の金融機関に、2同一の外国通貨で、3継続して預け入れる場合の預貯金の預入については、外貨建取引に該当しないこととされていますので、その元本部分に係る為替差損益が認識されることはありません。
この所得税法施行令第167条の6第2項《先物外国為替契約により発生時の外国通貨の円換算を確定させた外資建資産・負債の換算等》の規定は、外貨建預貯金の預入及び払出が行われたとしても、その元本部分に関しては、同一の外国通貨で預入及び払出が行われる限り、その金額に増減はなく、実質的には外国通貨を保有し続けている場合と変わりはなく、このような外貨の保有状態に実質的な変化がない外貨建預貯金の預入及び払出については、その都度これらを外貨建取引とすることにより為替差損益が認識されることは実情に即さないものであると考えられることから、所得税法第57条の3第1項《外資建取引の換算》でいう外貨建取引からは除かれることを明らかにした例示規定であると解されます。
このようなことを踏まえると、本件預金の預入及び払出は、他の金融機関へ預け入れる場合であるとしても、同一の外国通貨で行われる限り、その預入・払出は所得税法施行令第167条の6第2項でいう外国通貨で行われる預貯金の預入に類するものと解され、所得税法第57条の3第1項の外貨建取引に該当しない、すなわち、為替差損益を認識しないとすることが相当と考えられます。

 

外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合

米ドル建で預け入れていた預金1万ドル(1ドル=100円)を払い出して、その全額を外貨建MMFに投資(1ドル=150円)した場合

預入時 1万ドル×100円=1,000,000円 → 投資時 1万ドル×150円=1,500,000円       この差額500,000円は 為替差益を所得として認識する必要があります。

外貨建の預金をもって外貨建MMFに投資した場合には、新たな経済的価値(その投資時点における評価額)を持った資産(公社債投資信託の受益権)が外部から流入したことにより、それまでは評価差額にすぎなかった為替差損益に相当するものが所得税法第36条《収入金額》の収入すべき金額として実現したものと考えられますので、当該外貨建MMFの投資金額の円換算額とその投資に充てた外国通貨を取得した時の為替レートにより円換算した金額との差額(為替差損益)を所得として認識する必要があります。

外貨建取引により外国株式を譲渡した場合

外国株式を外貨建てにより譲渡した場合、その譲渡所得のうち、外国株式に係る保有期間の為替相場の変動により生じる為替差損益は、雑所得として区分することなく、邦貨換算額をもって株式等に係る譲渡所得等の金額として申告します。

 

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