消費税の輸出取引の免税
昨今の円安で日本に旅行などで訪れる外国人が増加していますが、日本製品についても輸出が増加しています。消費税については、事業者が国内において行う資産の譲渡等については、原則として消費税がかかります。しかし、資産の譲渡等が輸出取引に該当する場合は、消費税が免除されます。
輸出取引にかかる消費税
輸出取引に係る消費税の特徴として、確定申告により消費税が還付されるケースがあります。
例えば、円安の影響を受けて割安となった貴金属やアクセサリーなどを日本で仕入れて、海外に販売する場合、輸出取引に該当すれば消費税は免除されます。そして、この売上に対応する課税仕入れには消費税等が含まれているため、確定申告により仕入税額控除を受けることで消費税等が還付されます。そのほかその輸出取引を行うのに必要な事務用品費や広告宣伝費などの経費についても仕入税額控除を受けることができます。
(注)仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、一定の事項が記載された帳簿及び請求書等(適格請求書等)を保存する必要があります。
免税される輸出取引の範囲
課税事業者が次のような輸出取引を行った場合には、消費税が免除されます。
①国内からの輸出として行われる資産の譲渡または貸付け
②国内と国外との間の通信または郵便もしくは信書便
③非居住者(注)に対する鉱業権等の譲渡または貸付け
④非居住者(注)に対する役務の提供
ただし非居住者(注)に対する役務の提供であっても国内に所在する資産に係る運送や保管あるいは国内における飲食や宿泊のほか、これらに準ずるもので当該非居住者が国内において直接便益を享受するものについては免税とされる輸出取引にはならず、消費税が課税されます。
(注)ここでいう「非居住者」とは、外国為替及外国貿易法第6条第1項第6号に規定する非居住者をいいますので、本邦内に住所又は居所を有しない自然人及び本邦内に主たる事務所を有しない法人が該当します。なお、非居住者の本邦内の支店、出張所その他の事務所は、法律上の代理権があるかどうかにかかわらず、その主たる事務所が外国にある場合においても居住者とみなすこととされています。
郵便物として輸出した場合の輸出証明書類
令和3年10月1日以後に行われる資産の譲渡等から適用される、郵便物として輸出する場合(当該資産の価額※が20万円以下の場合に限ります。)の輸出免税の適用をうけるための輸出証明書類は、以下となります。
※この価額とは、FOB価格であり、原則として、当該郵便物の現実の決済金額(例えば、輸出物品の販売金額)となります。
なお、当該資産の価額が20万円超であれば税関長の輸出許可書が必要となります。
(注)輸出の時における当該資産の価額が20万円を超えるかどうかの判定は、原則として郵便物一個あたりの価額によりますが、同一受取人に2個以上に分けて差し出す場合には、それらの合計額により判定します。(消基通7-2-23)
① 小包郵便物又はEMS郵便物
⑴ 日本郵便株式会社から交付を受けた当該郵便物の引受けを証する書類
及び
⑵ 発送伝票等の控え(以下の事項が記載されたもの)
イ 輸出した事業者の氏名又は名称及び住所等
ロ 品名並びに品名ごとの数量及び価額
ハ 受取人の氏名又は名称及び住所等
ニ 日本郵便株式会社による引受けの年月日
② 通常郵便物
日本郵便株式会社から交付を受けた当該郵便物の引受けを証する書類(品名並びに品名ごとの数量及び価額を追記したもの)
上記より、現実の決済金額が20万円を超える郵便物は、輸出許可書を取得しない場合は輸出免税の適用が受けられないので注意が必要です。
輸出取引に係る輸出免税の適用者
輸出免税の適用を受けるためには、輸出者本人が輸出したことを証する所定の書類を保存することが必要となりますが、輸出手続きを代行業者に依頼した場合には、輸出免税の適用はどうなるでしょうか。
国税庁の質疑応答事例によると 実際の輸出者及び名義人は、次の措置を講ずることを条件に、輸出申告者の名義にかかわらず、実際の輸出者が輸出免税の適用を受けることができるものとします。
1 実際の輸出者が講ずる措置
実際の輸出者は、輸出申告書等の原本を保存するとともに、名義貸しにかかる事業者に対して輸出免税の適用がない旨を連絡するため「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」などの書類を交付すること。なお、実際の輸出者は、名義貸しにかかる事業者に対して、その輸出取引について税法上、売上及び仕入として認識されないものであることを指導する。(注)名義貸しにかかる手数料(代行手数料)は、実際の輸出者に対する課税資産の譲渡等に係る対価であるため輸出免税の対象とはならず、課税売上となります。
2 名義貸しにかかる事業者が講ずる措置
名義貸しに係る事業者は、確定申告書の提出時に、所轄税務署に対して、実際の輸出者から交付を受けた「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」などの書類の写しを提出します。ただし、当該確定申告書等の提出に係る課税期間において全く輸出免税の適用を受けていない場合には、この限りではありません。