事業としての不動産貸付け(事業的規模)とは
不動産所得の確定申告で、事業としての不動産貸付け(事業的規模)とそれ以外の不動産貸付けと区分についてが問題になりますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
事業としての不動産貸付け(事業的規模)とは
建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。
(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。
(所基通26-9)
いわゆる5棟10室基準ですが、事業的規模であっても事業所得ではなく不動産所得となります。
事業的規模とそれ以外での違いとは
不動産の貸付けが事業的規模かそれ以外かによっての違いは主に次のとおりです。
- 第51条 資産損失の必要経費算入
賃貸用固定資産の取壊し、除却などの資産損失については、不動産の貸付けが事業として行われている場合には、その全額が必要経費となります。それ以外の場合には、その年分の資産損失を差し引く前の不動産所得の金額が限度となります。
- 第57条 事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等
生計を一にする配偶者などの家族が事業に従事する場合に、不動産の貸付けが事業として行われている場合には、その家族に支払う給与は必要経費になります。それ以外の場合には、経費になりません。
- 第64条 資産の譲渡代金が回収不能となつた場合等の所得計算の特例
賃貸料等の回収不能による貸倒損失については、不動産の貸付けが事業として行われている場合には、その回収不能となった年分の必要経費となりますが、それ以外の場合には、収入に計上した年分にさかのぼって、その所得がなかったものとして計算し直します。
→事業に至らない規模の不動産貸付において未収家賃が回収不能となった場合
事業に至らない規模で不動産の貸付けが行われていた場合において、回収不能となった年分の不動産所得の金額が赤字の場合には、なかったものとみなされる金額は生じません。
- 第25条の2 青色申告特別控除
青色申告特別控除は、不動産の貸付けが事業として行われている場合には、最大65万円の控除が受けられます。それ以外の場合には、最大10万円となります。なお、不動産所得が青色申告特別控除額より少ない場合には、その金額を限度とし、不動産所得→事業所得の金額から順次控除します。