【令和8年成立・医療保険制度改正】後期高齢者医療制度における「金融所得の公平な反映」とは?

令和8年(2026年)5月に医療保険制度改正法が成立しました。今回の改正では、医療費の窓口負担や保険料に関するさまざまな見直しが行われましたが、投資などを行っているシニア世代の方にとって特に重要なのが「後期高齢者医療制度における金融所得の公平な反映」です。

現在、株式投資などをされている方から「確定申告をした方が得か、しない方が得か?」というご相談をよくいただきますが、今回の法改正はまさにこの部分にメスを入れる内容となっています。

具体的に何が問題視され、今後どう変わっていくのかをわかりやすく解説します。

なぜ見直しが必要になったのか?(現在の制度の「不公平」)

現在、75歳以上の方(後期高齢者)が病院の窓口で支払う医療費の自己負担割合は、所得に応じて「1割」「2割」「3割」のいずれかに決まります。また、毎月納める医療保険料も所得をベースに計算されます。

ここで問題となっていたのが「上場株式の配当金や売却益(金融所得)」の扱いの違いです。

確定申告をしない場合(特定口座・源泉徴収あり等)

特定口座・源泉徴収ありの場合、上場株式等の譲渡益に対して所得税や住民税が自動的に徴収されるため、損失の繰越しや他口座との損益通算をしない場合は確定申告の必要がありません。したがって、金融所得は「所得」としてカウントされません。そのため、株で数千万円の利益があっても、年金収入が少なければ医療費の窓口負担は「1割」のままになることがあります。

確定申告をした場合(損益通算や配当控除を受けるため等)

金融所得が「所得」として合算されてしまいます。その結果、基準を上回ってしまい、医療費の窓口負担が「3割」に跳ね上がったり、医療保険料が高くなったりするケースがあります。

つまり、「同じくらい株で利益を出しているのに、確定申告の有無(申告手続きの違い)だけで医療費の負担割合が大きく変わってしまう」という不公平が発生していました。

 

制度改正で何が変わる?

今回の医療保険制度改革では、現役世代の負担上昇を抑え、制度全体を公平に維持するために、この不公平を解消することになりました。

具体的には、確定申告の有無にかかわらず、上場株式の配当などの金融所得を、後期高齢者医療制度の「窓口負担割合(1〜3割)」や「保険料」の判定に正しく(公平に)反映させる仕組みへと見直されます。これにより、「申告不要制度を利用して金融所得を見えなくし、医療費の負担を1割に抑える」といったことが今後は難しくなっていく方向です。

 

どのような方に影響がある?

主に以下のような方に影響が出る可能性があります。

  • 75歳以上(後期高齢者医療制度の対象者) または、今後75歳を迎える方
  • 「特定口座(源泉徴収あり)」などで上場株式の配当金や譲渡益(売却益)を一定以上得ている方
  • これまで、医療費の自己負担割合を上げないためにあえて確定申告(申告不要)を選択していなかった方

制度の詳細な運用開始時期や、どこまでの金融所得を基準にするか等の細かな実務要件については今後の政省令等で定められていきますが、「金融資産から十分な収入がある方には、それ相応の医療費負担を求める」という大きな流れが決定したことになります。

 

NISA口座はどうなる?

この制度改正が行われた後も、NISA(少額投資非課税制度)口座内で生じた配当や売却益は、引き続き対象外です。NISAでの利益はそもそも非課税所得であるため、医療費の窓口負担割合や保険料の算定には一切影響しません。

どのように金融所得を把握するのか?

「確定申告をしないのに、どうやって市町村が金融所得を把握するのか?」という点について、改正法では金融機関等に対する情報提供の義務化が盛り込まれました。

  • マイナンバーなどを活用し、金融機関から直接「法定調書(特定口座の年間取引報告書など)」のデータがオンラインで市町村(後期高齢者医療広域連合)へ提供される仕組みが構築されます。
  • これにより、本人の申告手続きの有無にかかわらず、行政側が自動的に金融所得を把握し、保険料や負担割合の判定に反映させることが可能になります。

いつから始まるのか?(施行時期)

法律自体は令和8年(2026年)5月29日に成立(6月5日公布)しましたが、即時スタートではありません。金融機関や行政側のシステム改修に時間がかかるため、実際の運用開始(施行日)は「公布の日から起算して5年を超えない範囲内」とされており、実務上は2030年度(令和12年度)頃からの導入が見込まれています。

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